<南風>遺品が語る沖縄戦


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 沖縄戦を考える「遺品が語る沖縄戦」の展示会が、8月3日から3日間、福島市で開催された。「ふくしま学びのネットワーク」と、「沖縄戦遺骨収容国吉勇応援会」の共同開催。「ふくしま学びのネットワーク」代表の前川直哉福島大学特任准教授は神戸出身。灘高校在学中に阪神淡路大震災を経験した。そして、灘高教諭時代起きた「東日本・津波・原発事故大震災」をきっかけに、「教育を通じて福島の復興を支えたい」と退職して福島に移り住んだ。

 この展示会は、「沖縄戦遺骨収容国吉勇応援会」が中心になっている。同会学生代表の西尾慧吾さん(20)は、灘高校卒。現在はアメリカのイェール大学に留学中。西尾さんは高校の修学旅行で訪れた沖縄で、戦後70年以上経っても、沖縄戦の遺骨や遺品が数多く見つかる現実に衝撃を受けた。そして、60年間にわたり、沖縄戦の遺骨・遺品収容に取り組んできた国吉勇さん(80)に会い、国吉さんの了承を得て遺品の展示会を全国で行っている。

 展示された遺品は、「火炎放射で炭化した乾パン(地上戦の惨禍を示す)」「陶器製地雷(日本軍の軍事活動に関する)」など63点。遺品の解説文は、全て西尾さんが書いた。

 西尾さんに福島で展示会を開くことへの意義を聞いた。「福島で起きた原発事故は決して福島県だけの問題ではなく、日本中がきちんと考え議論する問題。沖縄戦やその後の占領、そして現在の基地問題についても、沖縄の人々だけではなく、日本中で学び議論するテーマ。福島の皆さんに、『沖縄の声』をしっかり聞いて欲しかったから」。

 前川准教授が3日間を振り返った。「原発事故がもたらした数多くの困難が続く中、『福島の声』を無視しないでと願う私達に、『沖縄の声』にしっかりと耳を傾ける事の大切さを教えてくれた有意義な時間だった」
(大和田新、フリーアナウンサー)