<南風>おしゃべりはボケ知らず


社会
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 私の母・春は97歳、今でも一人で暮らしています。食事は私たち子どもが交代で持って行きますが、掃除や洗濯などは全部自分でやっています。病院にも一人で行くので、看護婦さんが心配して「ご家族はどうしたんですか」と聞いてくることもあるそうです。

 半年前までは、毎日のように近所の同級生の仲眞良盛さんが訪ねてきて、午前中お茶を飲みながら世間話に花を咲かせていました。いつだったか、二人で日本の初代の総理大臣は誰だったかという話になり、「ああ、伊藤ハクブンだったね」ということになったそうです。その話を聞いた私が、「伊藤ヒロフミじゃないの」と言うと、「戦後はそう教えているが、当時はハクブンと言ったんだよ」と教えられました。とても97歳とは思えない話題と記憶力に、ただただ感服しました。

 親戚は「97歳までこんなに元気で頭もしっかりしていて、生活も自立しているおばさんは私たちの目標よ」と言ってくれます。

 今年の6月にはドイツの新聞社の取材へ、長寿の秘訣についてインタビューを受けたようです。母がこのように元気なのはもちろん遺伝や自立した生活のせいもあるのでしょうが、私はその秘訣はおしゃべり好きにあるのではないかと思っています。

 母の所にはいろいろな人が訪ねて来てよくおしゃべりをしています。おしゃべりは脳を活性化しボケ防止にいいだけでなく、健全な精神を保つ上でもいい効果があると思います。

 私も休みの日には訪ねて行って、できるだけ母とおしゃべりするようにしています。ご多分にもれず同じ話が何十回も繰り返されたりするのですが、できるだけ「それ、もう聞いたよ」と遮らず聞くことを心がけています。元気でいてくれる母は、私たち子どもにとって何よりもありがたいことですから。
(普天間朝佳、ひめゆり平和祈念資料館館長)