<南風>キツネの門と猫の門


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 うちの庭には入り口が4つ、表の入り口とキッチンに続く裏口、そしてキツネの門と猫の門。

 去年の冬、裏の垣根をきれいに剪定(せんてい)したところ、右下に30センチほど、左下に15センチほどの隙間があった。蔦(つた)を引っ張って目隠しするも、結構目立つ。そのうち葉が茂ってくると隠れるだろうとほっておいた。

 数日後、外を掃き掃除していると、近所の猫が、垣根の左側の小さい隙間のあたりをうろうろ。どうも不審な動きをするなと思ったら、蔦をかき分けうちの庭に入って行った。小さい隙間は猫の門、大きい隙間はキツネの門だった。

 実は、ロンドンには野良ギツネがたくさん住んでいる。郊外の森が減り、食料を求めて都市部に住み着くようになった。うちの庭に住んでいるキツネは、時々庭で日向ぼっこをする。そんな時は、「俺の庭で何してんの」という目つきで凝視され、一体誰が家主やら分からない。

 猫はキツネの獲物になってしまうので、キツネの門には近づかない。いくら蔦を引っ張って隙間を隠してもキツネの門も猫の門も、いつの間にか元どおり。

 朝、早起きして水撒きをしていると、5、6匹のリス軍団が現れ、塀の上をものすごい勢いで駆け抜ける。最近は夏の終わりなので、木の実を拾ってきてはそこら中に穴を掘って埋める。時には、私が苗を植え付けたばかりの鉢も掘り返すので頭に来る。可愛い顔して全くの厄介者だ。

 近所の猫は、最近、狩猟が趣味らしく、ネズミやら鳥を捕まえている模様。リスたちが酷く散らかした日には、こいつらも狙ってくれと思ったりするが、リスの方がすばしっこいので無理に決まってる。

 時々、キツツキのトントンという音も響いて来るが、姿は見えない。猫には捕まるなよと願っている。

(渡名喜美和、英国沖縄県人会会長)