コラム「南風」 プロフェッショナルとは


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 たまにはプロらしい話を。私のプロフェッショナルは主に「話す」こと。では「プロ」とは何か。「プロとは、そのことでお金をもらう人のこと」。そう教わった。

 私がアナウンサーとして入社して間もない頃。右も左も分からないどころか、自分がどこにいるのかも分からないような状態で、ラジオでニュースを読み、テレビでは情報番組を担当した。今思えば相当勇気のある会社だったと思うが、とにかく当時は必死でやるしかなかった。「必死でやる」といえば聞こえはいいが、実は私の中にはちゃんと「言い訳」があった。「私はこの間まで学生で新人なんだから、できなくて当然。何も知らなくて当然!」
 そんな風に、仕事に対して何の責任感も持っていなかった私、ある日、当時の上司に何気なく話しかけられた。「お前、プロってどういう人のことを言うと思う?」「え~? 何かの分野ですっごい秀でてる人とかじゃないですか」。まぁ、そんな風に答えたと思う。そして返ってきた答えが冒頭の言葉。私はそれに即座に賛成することができなかった。お金をもらうことがプロだとしたら、私はとっくに「プロ」だったからだ。
 上司の話はこうだった。「君は話すことですでに給料をもらっている。見る人、聴く人に君の事情は関係ない。だから、放送で『まだ新人なので』なんて二度というな」。そう言われて、私は初めて学生気分が抜けず周りに甘えていたことに気が付いた。誠心誠意を尽くしていなかった。許してもらうことばかり考えていた。
 「私の事情は関係ない」。それは今でも胸に刻んでいる。少しくらい気分が悪くたって、失恋した後だって。そのうちにプロ意識が芽生え、技術が備わりプロ中のプロになっていくのだと思う。その時の上司には今でも頭が上がらない。
(宮城麻里子、パーソナリティ)