コラム「南風」 思い付きの旅


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 旅が好き。中でも思い付きの旅が大好き。なんとなく惹(ひ)かれた土地になんとなく行ってみる。目的はひとつくらい。あとはすべてタイミング。

 そんな私にとって、先週は思い出深い旅ができた。かねがね見たいと思っていた紅葉の時期と私の休みがピタリと合った。紅葉と桜の見頃だけは、事前の予測が難しい。学生時代から何度かチャレンジしたがいつも時期はずれだった。さらに京都と大阪の友人も合流できるという。帰りの飛行機も決まらないうちに、この機会を逃してはならない、えいっ!とばかり沖縄を後にした。
 京都では銀杏(いちょう)の並木が見事に色づき、大阪に住む友人の小さな息子まで「秋だぁ!」とはしゃいでいた。ライトアップしているというので向かったのは、夜の高台寺。周辺を歩くだけでも十分紅葉が美しい。わざわざ拝観料を払うまでもなさそうだったが、せっかく来たのだからと境内にお邪魔した。奥へ進み庭園を目の前に私たちは息をのんだ。素晴らしい!素晴らしい!薄黄色から深い赤へのグラデーション。池はキラキラ輝く鏡となった。日本人の美意識と自然の力の見事な融合だった。
 翌日は花より団子。湯豆腐を楽しみに嵐山へ。ついでに竹林を散策したり縁結びの神様にお参りをしたり、ぶらぶら。と、目に留まったのが「見頃です」の文字と矢印。「せっかくだしね」軽いノリで入った庭園。そこで私たちはまたまた息をのんだ。柔らかい日差しにハラハラと舞う真っ赤な葉。その色をより際立たせていたのは地面をびっしり覆った苔の鮮やかな緑。京都の友人は苔愛好家で、大興奮。こうやって触ると気持ちがいいだのと苔の楽しみ方を教えてくれた。
 紅葉の夜の顔と昼の顔。見事なタイミングで満喫できた。行き当たりばったりといえばそれまでだけど…。
(宮城麻里子(みやぎまりこ)、パーソナリティ)