コラム「南風」 森・川・海のつながり


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 海の中、鯨の母子がシャチの群れに引き離され、仔鯨が溺れさせられる映像を、目を皿のようにして見る息子。「食べられちゃうの?」。テレビ画面を見る目が潤んでいる。「だから、早く大きく強くならないとダメなんだね」と、息子自身がしっかりご飯を食べるように促す。

 自然界は弱肉強食。人間だって、いつでも子どもを守ってあげられるわけではない。自分で考え対応する力、生きる力、知恵を身につけさせなければならない。「さまざまな命を頂いて生きている」という原点を感じ、つながりの中で生きていることを早くに実感できれば、人生しめたものだと、私は思っている。かく言う私は、その気づきが遅かった。海人と出会うまで、それを体感する機会を得られなかった。
 資源や環境の保全と水産業振興への決意を新たに「まもろうよ きせきのほしの あおいうみ」をテーマに進められた「第32回全国豊かな海づくり大会」が終わった。アーラミーバイやタマンの稚魚の放流、そしてフェスタ会場では「魚のつかみ取り」など、子供たちが海の生き物に触れ合えるイベントもあり、良かったと思う。しかし大会の原点である「豊かな海とは?」という本質に触れるものがあっただろうか?
 卵がかえり稚魚が成長するために不可欠な干潟やイノーなど、浅瀬の海の回復なくして、海の生き物が増えることはない。人間の身体にしても、「肩が痛いから肩を治療」「膝が痛いから膝を…」と、局所のみしか治療しない方法だと、またすぐに再発してしまう可能性が高いように…。
 脚の靭帯(じんたい)を何度か切り、西洋医学と東洋医学に世話になってきた私は、水泳など水の力を借りて、体中に酸素を回して調整している。
 環境保全においても、森・川・海の活動がつながり合う必要を強く感じている。
(古谷千佳子(ふるやちかこ)、海人写真家)