コラム「南風」 特許でよみがえった昔の出来事


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 中部工業高等学校を卒業し、モールス信号の世界一きれいな学校・鹿児島電子工学院へ入学し勉学に励んでいた18歳の時の話。46年も昔のことです。
 寮は海抜が高いところにあり、桜島の頂上が真横に見えていました。実家へはがきを送るため郵便局へ買いに行き、帰りにはがきを持ち歩いていたら、霧のためわずかな時間ではがきが目の前でくるっと丸くパイプ状になりました。その時は不思議な現象だなと思いました。まさか46年後に特許としてよみがえるとは思いませんでした。

 これまで取得した特許は、電子回路の溶接、全指向性スピーカー、パイプ型スピーカーなどがあります。最後の特許は振動板です。スピーカーの振動板はほとんどが紙で出来ていますね。和紙は軽くて丈夫ですが唯一の欠点として湿度に弱い。実はオーデイオマニアの間では、アンプは温まるまでは良い音が出ないとまことしやかにささやかれていますが、実はスピーカーが原因だったのです。スピーカーの能率は非常に悪くたったの1%です。99%は熱として消費されるのです。
 上記理由により、たとえ1ワットで鳴らしたとしてもほぼ1ワットの熱が、スピーカーの中心で消費されて、コーン紙およびボイスコイルが完全に乾き、スカッとした音が出るようになる。オーデイオの迷信の一つです。
 昔のスピーカーは良い音がすると言われるのも、永久磁石がないコイルを巻いた励磁型であるためです。電気を流すことで熱が発生し、コーン紙、ボイスコイルが軽くなって抜けの良い音が出るようになるのです。
 どちらの特性も、46年前の出来事が今に結び付いて、特許が取れました。最初は拒絶されましたが意見書を出してやっと取れました。温故知新を組み合わせたら特許になる。実は私は半年で学校を中退した落ちこぼれです。
(知名宏師(ちなひろし)、知名御多出横代表)