コラム「南風」 農業で沖縄は蘇る


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 沖縄本島や離島を散策すると、遊休農地が多く見られる。そのような遊休農地を長期借用し、若者が農業を行う試みが出てきた。ぜひ、行政や企業、金融機関等が彼らの志を手助けしてほしいものである。

 農業分野が他の産業と比べて遅れているのは、生産と流通が一体化していないことにある。自動車や家電業界を見ても分かるように、市場に敏感である。「市場には何が、どのくらい求められているか」という情報が生産側に伝わり、それに基づいて生産計画を立てている。しかし、農業分野では、生産と流通、サービスがバラバラである。生産者には「消費者がどのような野菜をどのくらい求めているのか」という情報は、入ってこない。販売とサービスとの連携が取れていないのである。
 農業再生に必要なことは、生産と販売、サービスを一体化させることである。しかし、現実問題として家族単位の農家が、市場の要望に応えるには、規模が小さすぎる。個別の農家が市場のニーズの調査や流通、サービスの機能を果たすことは不可能である。
 そのような課題を克服し農業を行っている農家が、国頭村にある。個人農家が集まり農業生産法人を設立し、市場のニーズに合わせ、大量に単一の作物を育てている。その畑でできた農作物は、全量買い取りされる。年間売り上げ目標を立て、農業に経営を導入している新しい動きである。彼らの今後の動きを注視したい。
 農業技術は進歩している。その技術の担保があれば、素人でも十分に農業を行うことができる。高値で取引されるベビーリーフやミニトマトは、沖縄においても水耕栽培で十分育てられる。全国の市場が求めているのだから、補助金なしでも農業が成立する。沖縄の農業が蘇(よみがえ)る、そんな気がするのは私だけだろうか。
(玉城常治(たまきじょうじ)、T・WIN社長)