コラム「南風」 もしかしてだけど


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 私は精神科医をしています。精神科医は変わり者が多いと、昔は言われていました。そうかもしれません。自分が何者か分からず、知りたくて医者になったのですから。でも精神科治療の中心である薬物療法より心理療法の方に、それも異常心理学(病気)より普通の人の心の動きに興味を持ちました。それで私は精神科医の中でも変わり種なのです。

偏屈の偏屈。裏の裏なので、あれ、ひょっとすると私は表? 「もしかしてだけど、もしかしてだけど、それっておいらは、正常なんじゃないの?」(お笑いコンビどぶろっく風に)
 ちょっとふざけた私は周りからどう見られているのでしょうか。「イメージと違う」「こんな人とは思わなかった」とよく言われます。そもそも人は仮面(ペルソナ)をつけて生活しています。本当の自分なんてあるのでしょうか。毎日私たちが踊っているのは「仮面舞踏会/マスカレード」(庄野真代)。現実の苦悩から少し距離を置いて見ると、人生は「夢芝居」(梅沢富美男)と言えるかもしれません。
 そして人は仕事、役割、立場、性格、気質、性別、人種などから差異が生じ、行き違いや対立が起こります。「人生いろいろ」(島倉千代子)、同じ人はいないしそれぞれが個性的でユニークな存在なので、互いに尊重し合うことが大切です。
 これから私の専門分野の知識・経験を基に、暮らしの断面を切り取り描いていきます。それは私のストレングスを生かしたやり方で行います。私の強みは好奇心とユーモアです。そして趣味は音楽で、オールディーズやフォーク、ニューミュージックなどが好きです。それらを織り交ぜながら、私の日常を描いていきたいと思います。お付き合いください、「よろしく哀愁」(郷ひろみ)。
(長田清(ながたきよし)、精神科医)