コラム「南風」 沖縄との縁


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 18歳の時に初めて沖縄を旅行した。小学生の時、実家(千葉県柏市)近くにテニスクラブができ、幼なじみのMとスクールに通っていた。クラブには大学生のコーチが数人いてとりわけ教え上手で老若男女から人気のあった2人は沖縄からの大学生だった。

 就職のためUターンした数年後、Mから一緒に沖縄に行こうと誘われた。
 クルージングツアーに参加した。私は、乗る前からシュノーケリングはせずに甲板で待っておこうと決めていた。Mは社交的で好奇心旺盛な女性だった。対照的に私は新しいことは苦手な消極的な人間だった。一緒に参加した初対面の人から、とにかく海に入ってごらんと言われ、しぶしぶ水中眼鏡とフィンをつけはしごを降り、恐る恐る海の中をのぞいた。
 自分の足の下は必ず地面があるはずだった。地面がないのだ。そして私のいる場所よりずっと奥の海の底から誰かが私に手を振っている。黄や青の魚たちがキラキラ輝く海中を伸び伸び泳ぐ景色に、少々お邪魔します、勝手に入ってすみませんねと他家の庭に入ってしまったボールを取りに行く時の気分だ。身を置いたことがないこの空間は私にとって衝撃だった。その現場に実際に行って、見て感じて初めて発見することがある。
 帰る日、バスに乗り空港に向かう途中、ヤシの木がリズムよく並ぶ車窓をぼけっと眺めながら「私、ここに住むかも~」と思った。 24歳の時に、ひょんなことから沖縄で働き始め今年は21年目だ。
 現在は職業人の人材育成業でお世話になっている。自分に自信がないのに頑固だった私を大きく成長させてくれたのは仕事を進める中での体験だ。人や出来事から教わり、潜在能力をも引き出してもらった。
 さぁ、年齢を重ねるごとに固くなる心の内鍵を開けて今年も成長したい。
(田港華子、オフィスDEN代表)