コラム「南風」 シャツに込めた思い


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 目につくように、真っ赤な大きな日の丸を日本地図の東北地方にかぶせ、「東北から、ありがとう」と書いたタグ付きシャツを弊社(鎌倉シャツ)の直営22店の店頭に並べた。福島県内の工場で縫製した商品だ。

 東日本大震災から2カ月。未曽有の大災害に国内はもとより世界中から援助活動をはじめ多くの支援の手が差し伸べられた。
 福島県に3社、弊社の協力縫製工場があり、全発注量の35%を占める。私は「シャツができてこない! 今、できることは何なのか?」と考えた。そこで操業ままならぬ福島でシャツを作る工場に心から感謝と激励の思いを込めてタグにした。福島県産の商品が放射能汚染うんぬんという風評被害にさらされ、消費者から敬遠されかねない風潮への挑戦の意味も込めて。
 「頑張れ東北!」といった文字が多い中、あえて「東北から、ありがとう」としたのは、もし自分が災害地で生活する身だったらと考えたからだ。震災で大切な人を失い絶望の底にいて、それでもいかに今日を生きるか精いっぱい頑張っている人たち。今、必要としているのは安定した仕事だ。われわれができることは被災地で一生懸命シャツを縫ってくれている人たちの職の確保。中国からの技能実習生は原発事故後、一斉に帰国し操業力が落ちた。工場の収益を補ってもらおう。われわれから納期の延長と工賃の引き上げを申し出た。私たちの会社の利益などは今考えることではない、今はカンフル剤が必要と判断した。消費者には「福島で作ったシャツだけど大丈夫、みんなで応援しようよ」と訴え掛けた。
 このタグの企画を各店長や社員を集め発表した。彼らの中で「感謝の気持ちを縫製工場の人たちに伝えたい」ということになり、寄せ書きとメッセージビデオを福島の工場に送った。思わぬ反響が起こった。
(貞末良雄(さだすえ・よしお)メーカーズシャツ鎌倉会長)