コラム「南風」 風邪なんてものはさ…


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 最近、救急外来の受診について、自制を求める意見が増えてきているようです。もちろん、夜間の救急外来で、「腰が痛いんです」「いつからですか?」「5年前からです」なんて会話があるのは事実。救急への不要不急の負荷は減らしていただきたいと思います。

 でも、ちょっと気になるのは、子どもの発熱について安易に自制を求める意見ですね。「風邪なんてものはさ」と語られる言説には、いささかの警戒感が必要だと私は思っています。
 そう、風邪なんてものは寝てたら治ります。でも、母親は「風邪じゃないかもしれない」から心配してんですよ。「風邪なんてものはさ」には、そんな母親の不安に応えることなく、単に「子どもの熱なんて風邪でしょ」と雑にくくる無責任さがみてとれませんか?
 全ての親たちが、発熱している子どもについて、想像力を働かせながら守ろうとしています。ある種の本能ですね。親として連れて行った方がいいと思うなら、迷わず連れて行くべきです。その結果としてただの風邪だったとしても、周囲も、医療者も、とやかく言うべきではありません。
 私たちは「熱を出した子どもが心配になったら、いつでも診療所や病院で診てもらえる」という素晴らしい医療制度をつくり上げました。これは最後まで大切に守るべき制度です。無駄ならもっとありますよね。
 例えば、治療を求めるのではなく、診断を求めに来られる患者さん。診察室に入るなり、「インフルエンザかもしれないので調べてください」と言われると、当直の疲れが骨身に染みます。それは救急外来の役割ではありません。緊急性がないのなら、どうぞ人手のある昼間に来てください。
 発熱した子どもの受診を抑制する方向ではなく、不要不急の救急外来への負荷を減らして、地域医療を守っていきたいですよね。
(高山義浩(たかやま・よしひろ)県立中部病院感染症内科地域ケア科医師)