コラム「南風」 問題発見力


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 昭和の後半、職場の達人が出演するバラエティー番組が時々あった。制服を着たベテラン社員の方がテーブルに領収書を何百枚も並べ、超スピードで無駄なく、社印を同じ場所にかすりなく押印できたり、パティシエが短い時間で卵黄と卵白を割り分けたりする。私はテレビの前で、その職人技に感激していた。

 最近は「何をつくっているでしょうか」と工場のロボットの映像に変わり、それはそれで目を見張る。IT技術の進化で、楽しい仕事は、パソコンやロボットに取られてしまった。30年後の少子高齢社会では職場に人工知能をもったアンドロイドが登場したりして。今は、一昔前のように伝票を一枚一枚ゴムのサックを指にはめ神業でチェックしなくても(古い?)、パソコンのアプリケーションソフトがスクリーニングをしてくれるので効率がよい。
 ただこのような環境は全体的には自らの問題発見力を低下させてはいないだろうか。それを経てきた先輩方は見渡せ、勘が働くが、若年社員は基を経験する時間が少なく一足飛びに問題解決の場を任されることがあるようだ。
 選択的注意(カクテルパーティー効果)という言葉を最近学んだ。たくさんの情報の中から必要な情報を選別すること。パーティー会場はガヤガヤして周りで話している人たちの話は聞き取れないが、関心のある話は不思議と耳に入ってくるという意味だ。
 「問題発見力」まだ見えていない問題を発見する力の開発を私なりに考えてみた。(1)好奇心 ワクワク・ドキドキの場に行く、仕事だけではなく趣味をもつ、価値観の異なる異質な人や自分では選ばない本との出会い、それらを楽しむ(2)共感力 相手の立場にたって考え、全体状況の中の自分を客観視する(3)継続性 (1)と(2)が習慣化されるように自己管理を工夫する。
(田港華子、オフィスDEN代表)