コラム「南風」 27歳今日このごろ


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 東京で大学時代の友人に会いました。私は大学時代はダンスの練習に明け暮れる毎日で、ダンスチームの仲間と朝方まで練習して、学校へ直接行く生活を繰り返していました。今では考えられないほどの体力に「若かったな」。そんな言葉が自然と出るほど私たちの間で月日が確実に流れているのを実感しました。

 27歳。卒業から5年がたち、私たちはそれぞれ人生の岐路を迎えています。
 私のダンスチームの仲間の一人が結婚し、先日子どもが生まれました。
 「え~、みゆきがもうママなの!」
 大学時代の私たちの姿を思い出すと、生まれたばかりの赤ちゃんをお母さんの顔で抱いている、みゆきの姿が信じられませんでした。そしてみゆきはこう言いました。
 「まなの曲、妊娠中にずっと聞いてたんだよ」
 何げなく言ってくれた一言に胸が熱くなりました。
 もう一人の友人は大学から長年付き合っていた恋人と別れました。私もよく知っている二人だっただけにびっくりしましたが、新しい道を選ぶことを決断するのは決して簡単なことではなかったと、その友人の真剣なまなざしから痛いほど伝わってきました。
 そして彼女は目に涙をいっぱいためて言いました。
 「まなの曲に救われたよ」
 こんなに歌手になって良かったと思った瞬間は、もしかしたら初めてかもしれません。自分のことで精いっぱいで、矢のように過ぎてゆく時間の中で、前へ進むことしかできなかった20代前半から、いろいろなことを経験して周りの景色を立ち止まって見ることが豊かさにつながるんじゃないかな。
 それぞれの人生の大事なときに、私の曲が少しでも彼女たちの心に寄り添うことができたら幸せだな。なんて思えた27歳今日このごろです。とか言っちゃって。
(Manami、歌手)