コラム「南風」 しまくとぅば継承の意義


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 しまくとぅばは、千年以上にわたり受け継がれてきた固有の言語であり、県民のアイデンティティー形成にはなくてはならないもので、日本語の姉妹語だと述べてきたが、別の観点にも触れてみたい。

 言葉は文化の基層なので、しまくとぅばを失えば、日本語圏内に完全に埋没してしまい、県民はアイデンティティーのよりどころを失うことになる。琉球芸能も日本文化の一部として変質していくはずである。
 一方、しまくとぅばがある限り、常にその中心には沖縄県がある。琉球文化の花はしまくとぅばでしか咲かないので、今後の文化的発展が望める。耳に届くしまくとぅばの入った歌には活気があり、心を和ませてくれ、みんなが一つになれる。映像で見るしまくとぅばの宣伝広告では日本語との言語的な違い、価値観の違いを話題にして、楽しそうに話している。このように、しまくとぅばは私たちに活気、和み、楽しさ、心の結び付きを与えてくれる。その使用には誇りすら感じ取られ、それが自信にもつながる。
 そういうわけで、しまくとぅばを商標として使えば注目される。地名や標識、名所旧跡とその説明も、しまくとぅばで表示するようにし、観光案内や公設市場などでしまくとぅばをできるだけ使う雰囲気にすれば、沖縄を大きくイメージアップできることは間違いない。
 学校では、教科としてしまくとぅばを教えることによって、児童生徒が琉球の文化や歴史にも興味を持ち始め、教育に対する無気力・無関心を取り除くことができる。さらに、若い世代が地域とのつながりを意識するようになって、文化にも誇りと自信を持つようになる。
 以上のように、しまくとぅばは沖縄県の地域社会の文化的・経済的発展の重要な資源となる。ひいては日本の文化的資産にもなる。
(宮良信詳、琉球大学名誉教授(言語学)