コラム「南風」 啓蟄の日は虫と遊ぼう


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 虫たちが土の中から顔を出し始めるといわれる日、啓蟄(けいちつ)。私が1年で最も好きな日です。ことしは3月6日で、今からどこに遊びに行こうかと悩んでいます。昨年は沖縄県指定天然記念物フタオチョウと、準絶滅危惧種リュウキュウウラボシシジミの両方を見ることができたぜいたくな日でした。

沖縄の場合、2月中ごろには気の早い虫たちが目覚め始めますが、啓蟄の日は晴れれば本当にそれまで以上の数の虫が動きだしますから、この日に気付いた昔の人々はすごいと思います。昔の人々は自然のリズムに合わせて生活していたのでしょう。
 現代人である私たちは自然に逆らって生きています。夜は遅くまで起きて、正体の分からない物を食べながら電磁波の出る箱に向かって仕事しています。窓の外を見れば不自然に変形させられた地形に人造物が密集し、開発や光害で虫は減りました。啓蟄を実感できている人はどのくらいいるのでしょうか。
 それでも人の動きに関係なく春は巡ってきます。偉大な地球や宇宙の仕組みを感じる時、せっかく奇跡の星に生まれたのに人はどうして自然との共生を放棄するのだろうと不思議でなりません。結局は無理が生じて、人々は新しい種類の病気になったり、飢餓を生みだしたり、異常気象や自然災害が起きたりします。これからはしっぺ返しの時代です。大人たちの身勝手な行為への報復が子どもたちに返ってきます
 街の明かりで虫を惑わす夜景を眺めるより、恋人の瞳に達した星の光に人のはかなさを思う方がよっぽど地球の全生物に優しいでしょう。そんなことを考えながら私は今宵(こよい)も1人、虫を探して歩きます。外来種などを除けば、今の時代は全ての昆虫が希少種です。啓蟄の日、虫たちを探して自然との共生を意識してみてはいかがでしょうか。
(宮城秋乃、日本鱗翅学会自然保護委員)