コラム「南風」 直感


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 目を閉じて何も見えず
 哀(かな)しくて目を開ければ
 荒野に向かう道より
 他に見えるものはなし
「昴(すばる)」谷村新司
 思いを決し人生を歩むとき、希望という一筋の明かりに照らされた道を進むほかはありません。その決断するための「直感」は、感覚的に物事を瞬時に感じとることであり、「直観」は五感も合理的な推論も用いず、対象の本質を捉える認識力を指します。

 2001年1月、米国トランスパーソナル学会の会長のチャン教授の直観力ワークショップを東京で受けた時のことです。私は教授のデモ面接を受けました。名前を聞かれ、一言二言、言葉を交わした後言われました。「あなたには灯台が重なって見えます。周りを照らす理知的な光が人々に希望を与えています。これは何ですか」。個人開業を考えていた私は、驚くと同時に勇気をもらいました。それで私のクリニックの屋根と名刺には灯台のイラストが描かれています。
 直感には霊感(何かが見える)、山勘(当て推量)、第六感(虫の知らせ)、閃(ひらめ)き(突然の着想)、啓示(教えが降りる)などがあります。そして女の勘も。世の中理屈だけでは動いていない。
 直感の中でも女の勘は鋭い。五感を動員して理屈抜きで即座に事態を把握します。後ろめたい男はつじつま合わせの言い訳を弄(ろう)しますが、女の勘は大脳皮質で作動せず本能で働くので男の言葉は用をなしません。
 折れた煙草(たばこ)の吸いがらで あなたの嘘(うそ)がわかるのよ 誰かいい女(ひと)できたのね
「うそ」中条きよし
 私の母は米寿を過ぎてもまだまだ元気で若々しい。車の運転もします。母と一緒にいて、特に男性から「奥さまですか」と言われることがあります。それでは私が80代に見えると言うことか。頭にきますが、傍らの母は大喜び。男の勘はあてにならないものです。
(長田清(ながたきよし)、精神科医)