コラム「南風」 トップの覚悟


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 経験した会社5社とも消滅した。学んだことは「会社とはつぶれやすいもの」ということである。原因はトップの資質に帰する。トップに立つ人が尊敬されなければ、会社は存続できない。働く人たちの目標がなくなり、正義を行うことが評価されなくなるからだ。最終的には会社の内部が崩壊する。赤字や競合激化では会社はつぶれない。内部要因でつぶれる。

 会社にその存続の意義があり、その重要性や使命を会社共通の価値観とすることができれば、会社はつぶれない。会社の存続が顧客の利益に貢献することになれば、顧客がその会社を支える。トップ1人では会社を救うことはできない。働く人たちの全ての行動がお客さまのためにと、同じ波長で共振していけば、それは必ず人々の心を動かす。
 トップは多くの人に注視されている。その人たちを欺くことはできないと知らなければならない。このくらいは大丈夫だろうと高をくくると命取りになる。下積みをし、努力をして上を目指している人たちからトップは、いつも評価、値踏みされていると自覚せねばならない。私が勤めた全ての会社で、私が経験してきたことであるからだ。
 その経験のない人がいきなりトップの重責を余儀なくされた時、経験、すなわち五感で知り、身に付いたことの大切さには気づかない。経営書、セミナーに参加して分かったように勘違いするのである。「理解する」と「行動に移す」のとは異質なものだからだ。
 トップは常に覚悟しなければならない。すなわち、最も困難なことに立ち向かえるのは誰か。それはトップたる本人以外いない。従ってトップが決める必要のないことには口を出さないことだ。誰でもできることに時間を費やし、悦に入っているとしたら、そのトップは無能のレベルに落ちたと心得なければならない。
(貞末良雄、メーカーズシャツ鎌倉会長)