コラム「南風」 子どもたちに発見の楽しさ伝えたい


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 昨年6月、私の勤めるうるま市立海の文化資料館による浜比嘉島の昆虫の調査中に、いままで見たことのない昆虫を見つけました。15ミリほどと大きく、このサイズなら通常は初めて出会う昆虫でも何の仲間か分かるのですが、この昆虫はまったく分かりません。

上の翅(はね)は小さく、下の翅が半分以上見えており、頭もお尻も変わった形です。撮影した画像を甲虫に詳しい先輩に見せたところ、「これはすごい! なんだか分からない」との返事。翌日には交尾しようとしているペアを見つけ雌雄を確認できました。先に見つけたのはメスで、オスには房状の大きな触角がありました。オスの画像を先輩に見せると、なんと2011年に東村高江で1頭採集し標本を持っているとのこと。その後も浜比嘉島では同じ虫が複数見つかり、私は名前も分からぬまま生態を記録し続けました。少なくとも生態は新知見であろうと予測できたので、その調査はとてもワクワクするものでした。
 後になってこの虫が、宮古島で3頭しか見つかっていないミヤコホソコバネオオハナノミだということが分かりました。宮古島以外での発見、野外での生態が新知見ということで、先月先輩と論文を発表しました。
 私は今月末で同館を退職しますが、勤務期間中に浜比嘉島の昆虫目録作成とともに昆虫の生態の新知見をいくつか発見することができ、その中で本種を発見し生態を調査できたことをうれしく思います。4月以降は私個人の調査となります。素晴らしい機会をくださった同館学芸員とうるま市には大変感謝しています。
 虫好きにとって、新種とか新知見という言葉は心が躍ります。子どもたちにもそんな発見のドキドキを味わってほしい。昆虫博士を育てたい! でも虫がいなけりゃ始まらない。だからまず本種の発見を生息地の保全につなげたいと思います。
(宮城秋乃(みやぎあきの)、日本鱗翅学会自然保護委員)