コラム「南風」 夢の途中


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 さよならは別れの言葉じゃなくて 再び逢うまでの遠い約束 現在(いま)を嘆いても胸を痛めても ほんの夢の途中
 (「夢の途中」来生たかお)

 さよならは「いつかまた逢うという約束」と考えると寂しくないですね。こういう肯定的な意味の解釈をリフレーミング(再定義づけ)と言います。物事をいいように受け止めることができると人生、人間関係は楽になります。
 私の臨床スタンスの解決志向アプローチは、悪いところより良いところを見るようにします。問題解決を焦らず、夢や目標に目を向けるようにするのです。悪い点やうまくいかないことにこだわっていると、自信をなくし前に進めないからです。
 解決できない問題や悩みはたくさんあって、一つ解決しても問題は次々出てきます。ひとたび問題が発生すると、周りの人たちはそれぞれの立場から問題を分析し、解決策を押し付けてきます。そういう解決策は大抵、本人には実行できないものばかりです。大切なのは本人が実行できるかどうかです。問題指摘ばかりでやる気を奪うより、できていることやうまくいっていること、やれそうなことに焦点を当て意欲を引き出していきます。
 そうさ僕らは 世界に一つだけの花 一人一人違う種を持つ その花を咲かせることだけに 一生懸命になればいい
 (「世界に一つだけの花」SMAP)
 たとえ取り組んでうまくいかなくても、結果よりプロセス(経過)が大切です。金メダルは1人だけですが、その下には無数のアスリートがいます。無名の選手でもその努力は称賛に値します。
 結果が出なくても、認められるとそれがエネルギーとなり、次の目標に向かい前に進むことができます。今は夢の途中だから。
(長田清、精神科医)