コラム「南風」 春の熊本と棚田


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 明日から4月だ。昨年私は4月になるやいなや、熊本に飛んだ。3泊4日の旅行である。母の友人で、家族ぐるみの付き合いをしている一家が熊本に住んでいるのだ。

 私が棚田が好きなのに一度も見たことがないという話を母が友人にしたところ、「熊本にも棚田があるから早く見に来なさい」と言われたのである。いつからだろうか。私は棚田が好きで、テレビで見てはうっとり、ネットで画像を見てはうっとりしている。
 沖縄から熊本への便は1日1便しかなく、熊本空港に着いたのは夕方5時。母の友人夫妻が迎えに来てくれた。日が沈むまで時間が許す限り、桜がきれいな場所を回った。立田のしだれ桜に、大津の桜のトンネル。早速、沖縄にない春を味わった。3日目には一心行桜を見た。大きな桜の木の周りに菜の花がたくさん咲いていた。桜のピンクと菜の花の黄色が美しかった。
 念願の棚田へ向かったのは2日目のこと。山の細い道をくねくね通って行く。たどり着いた小崎棚田はとても広大だった。緑の何枚も何枚も遠くまで広がる棚田は圧巻だ。ずっと見ていても飽きない。どうせ見るのなら広い棚田を、と調べてくださったそうだ。3日目には菊鹿町の棚田にも行った。近くには川が流れ風情があった。
 3日目は、ちょうど夫妻の結婚記念日で、夜は夫妻の娘さん家族たちとの食事会におじゃまさせてもらった。その帰り道は、せっかく本土に来ているのだからと、電車に少しだけ乗った。電車に乗る必要がないほど、4日間、夫妻が常に車であらゆるところを案内してくださった。本当に至れり尽くせりだった。
 熊本の春の風景がとても印象に残り、今年の年賀状には小崎棚田と一心行桜の写真を使った。
 今度はぜひとも水の張った棚田を見たい。
(トーマ・ヒロコ、詩人)