コラム「南風」 あいさつ力 前編


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 うりずんの季節、入学や入社、人事異動などたくさんの人が人生の節目を迎える。新社会人は、経験してきたいくつかの節目の中でも本当に自立するための成長のスタート地点である。今回は人間間係の第一歩、あいさつについて私のエピソードを伝えたい。

 私が新人時代、同期にあいさつ上手な3歳年下の女性がいた。社内での導入研修が6日間。その後、同じ部署になった彼女と業務に必要な資格取得のために、OFF・JT(職場を離れて知識・スキルを学習する能力開発)で社外の研修へ2週間通った。社に戻り、配属先で3カ月のOJT(現場研修)合計6カ月で一人立ちのスケジュールだ。
 ある日、他部署に書類を持っていくように指示された彼女。大きな姿見で身だしなみを整え始めた、社内なのになぜそこまで気を使うのか尋ねると「初めていく部署だから名前を覚えてもらうためにインパクトを残さないと」という回答。なんて積極的なんだろう、外側に自分を発信するような発想は当時の私にはなかったので感銘を受けた。
 OJT最終日。初めて2人で社員食堂に行くと、彼女はたくさんの他部署の人と既に知り合いのようで驚いた。入社日は一緒で知識やスキルの差はないのに、身をおく環境の違いは何か。
 普段どのように仕事をしているのか観察してみた。人間関係構築のスタートあいさつの三つのポイントを彼女は実践していた。(1)明るく笑顔で相手を見て(2)自分から先に声を掛ける(3)一言プラスする―。
 社交は得意ではなかったがまねするように意識した。すっかり無意識の数年後に転職した先の後輩から「続けるあいさつが上手でうらやましい」と言われ、じわっとうれしかった。こんなささいなことでも、よい習慣の積み重ねは、どこからともなくよい出会いがやってくる。
(田港華子(たみなと・はなこ)、オフィスDEN代表)