コラム「南風」 沖縄語の音声


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 沖縄語(うちなーぐち)と標準的な日本語(以後、日本語と言う)との違いを見るため、今回から沖縄語の仕組みをいくつか取りあげてみようと思う。まず初めに、沖縄語の連続子音、子音と母音の結合のタイプをみる。

 一般に仮名1文字は拍を表し、50音図における50音とは実際は50の拍を指す。日本語ではア行とヤ行「い」「え」が重複し、ワ行は2段しか埋まらない。
 一方、沖縄語では、ヤ行の「ゆぃん」〈縁〉、「ゆぇーま」〈八重山〉や、ワ行の「うぃきが」〈男〉、「をぅどぅい」〈踊り〉、「っうぇーか」〈親戚〉が示すように日本語のような重複や欠落はない。
 さらに、50音図で考えると、日本語のハ行に対して、ファ行の「ふぁー」〈葉〉、「ふぃー」〈火〉、「ふぇー」〈南〉と、ハ行の「はー」〈歯〉、「ふか」〈外〉、「ほーとぅ」〈鳩(はと)〉に分岐している。また、「くゎっくぃたん」〈隠れた〉における「くゎ/くぃ/くぇ」では子音kと半母音wの結合も見られる。
 沖縄語では、詰まる音「っ」(子音)で始まる「っわー」〈豚〉、「っちゅ」〈人〉、「っくゎ」〈子〉がある。語頭の母音はいつも詰まる音の子音を伴う。「ん」で始まる「んに」〈胸〉もあるので、しり取り遊びも日本語のようにはいかない。さらに、「っんに」〈稲〉、「っんま」〈馬〉のように3連続子音で始まる語もある。
 以上のように、日本語と比べると、沖縄語の拍の3割ほどは独自のもので、連続子音の種類や、子音と母音の組み合わせにおいて、かなりの違いが見られる。仮名1文字だけの自立語はなく、いつも2拍以上になる。
 沖縄語のタ行における「た」「ち」「てぃ」「とぅ」「て」「と」の拍の存在はいわゆる3母音説を骨抜きにするが、この問題はここではこれ以上は立ち入らないでおく。
(宮良信詳、琉球大学名誉教授(言語学))