コラム「南風」 子守唄


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 坊やよい子だねんねしな いまも昔もかわりなく
 母のめぐみの子守唄 遠いむかしの物語り
 (「まんが日本昔ばなし」)

 この曲を聞くと、温かい家庭の団らんがイメージされます。昔話は日本古来の生活の知恵や人情、道徳規範などがちりばめられた人生訓とも言えます。

 この昔話によく出てきた鬼や化け物は家族やコミュニティーの外に存在する魔物でした。ところが現代では、家族や地域の人たちによって子どもを虐待する事件が多く報道されてきています。他人だけでなく、自分自身の中にも鬼と化する部分があるのです。
 大人が子どもにしつけ・体罰と称して暴力を振るったり、暴言で心を傷つけたり、性的虐待したり、逆にまったく世話せず放置するなどの不適切な関わりが年々増えています。
 それに対して児童虐待防止活動(Child Assault Prevention)を行う組織、おきなわCAP(キャップ)センターがあり、私はその一員として虐待の予防啓発活動に取り組んでいます。私たちは学校(保育所から高校)や地域に出掛けて、子どもたちや保護者に対して、いじめや誘拐、性的虐待から身を守る方法を直接伝えます。安心・自信・自由の権利を楽しく学べるワークショップを年間200回、これまでの17年間で2500回以上行っています。

 ちっちゃな頃から悪ガキで 15で不良と呼ばれたよ
 ナイフみたいにとがっては 触るものみな傷つけた
 (『ギザギザハートの子守唄』チェッカーズ)

 幼児から思春期まで子どもの心は繊細です。子どもも周りの大人もうまくその心に付き合っていかなければなりません。私たちおきなわCAPセンターの願いは、全学校に毎年出掛けてこの活動を続けて行くことです。CAPのワークショップは楽しいので、子守唄にはなりませんけど。
(長田清(ながたきよし)、精神科医)