コラム「南風」 あいさつ力 後編


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 前回「あいさつ力前編」で新職業人へ4月は「本当に自立するための成長のスタートである」と表現した「本当に自立する」ってどんなことなのかと掲載後、もやっとしていた。辞書には「自立」とは、人の助けを借りず自分だけの力でやることとある。

 私の真意とは、ずれがある。「自立」という言葉を瓢瓢(ひょうひょう)と選択したことを後悔していた。
 そんなとき、私がプロボノ活動で関わりのあるVHOネット(ヘルスケア関連団体ネットワーキングの会)事務局より会員の書籍出版の案内が届いた。
 「患者の力~患者学で見つけた医療の新しい姿」。著者は加藤眞三慶応義塾大看護医療学部教授。患者と医療者の新しい関係「患者学」という学問を研究し自ら実践されている。
 その中に目からうろこの言葉を見つけた。
 「自立とは、多くの人に依存することである。依存する相手が増えるとき人はより自立する。依存する相手が減る時、人はより従属する。従属とは依存できないことだ。助けてくださいと言えたとき、あなたは自立している」(生きる技法・安冨歩・青灯社)。著者の加藤先生は、新しい気づきと出会える言葉を日頃から集め、患者さんと関わる場で、それを積極的に伝え、気持ちをあたため、自らの力が引き出されるよう工夫されていると述べられている。
 時節柄、職場では新人のやる気が上がる応答のあいさつを意識したい。以前、真冬に沖縄から帰省した際、独居していた父に、朝一で「寒いね」と声を掛けたら「寒いか寒くないかは温度計を見れば分かる」と言われ気持ちも2度ぐらい下がった。
 父は出版社で重役をしていたが、さぞかし当時の部下の方々は不愉快なことが多かったろうにと同情していたら、相棒からは、君にそっくりと言われてしまった。
(田港華子、オフィスDEN代表)