コラム「南風」 初夏の庭


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 庭のユーカリの木が脱皮を始めた。オープン当初に頂き物の苗を地植えしたところ膝下ほどの高さから2メートル以上にすくすく伸びたのだが、幹の厚い皮が順にめくれはじめ、つるりとした白緑の肌が顔を出している。何かの病気なのではと心配になり、調べてみると乾燥した不毛な土地でも育つよう自らの皮を落として肥料とし、さらに大きくなっていくようだ。合理的である。少しくたびれた私の肌も、きれいに一皮剥けたらいいのにと鏡を見てやや自嘲した。

 うちの店は今のところ夜12時までの営業なので、片付けなどをして就寝するのは結局平均2時すぎであり、起床は昼前になってしまう。もうすぐ夏がくる。起きると太陽は真上だ。庭仕事をするには暑過ぎる。曇りの日にしよう、とか少し早く起きた日にしよう、とかいっている間に庭は荒れ放題。サシグサの繁殖力といったら小憎らしいほどである。たまに早起きして草むしりをする私たちをあざ笑うかのようにトゲが服に付きまくり見る見る気持ちがなえてしまう。
 連日夜勤明けのひ弱な私たちにとって庭仕事は重労働で悩みの種である。そこで救世主となるのが主人のご両親。颯爽(さっそう)と軽トラで現れては小柄な身体からどこにそんな力が隠されているのか不思議なほどのスピードでバッタバッタと敵を倒していく。普段から畑仕事に慣れており、力加減がまるで違うのである。驚異のスピードで庭はきれいになる。しかし遠方からいつも来ていただくのは申し訳ない。と話をしていたら今度は常連の男性衆が買って出てくれた。いつも周りに助けていただいている。共に汗をかいた後のよく冷えたビールは最高であった。
 そろそろ月桃の花が咲き港川恒例の蛍が飛ぶ季節。庭は心を表すとも聞くが、今は未熟さと周りの愛情を感じる庭となっている。
(國吉真寿美、夜カフェ「rat&sheep」経営者)