コラム「南風」 沖縄語の語


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 沖縄語(うちなーぐち)独自の“人を表す”語の作り方を主に取り上げる。
 まず、名詞語尾の母音を長めることで、「しまー」(地元の人や産物)、「やまとぅー」(内地の人や産物)や「ゆんたくー」(話好きな人)を表す語ができる。形容詞の場合も同様に、「まぎさん」(大きい)や「ながさん」(長い)から「さん」を除いた部分の最終母音を長めて、「(ちぶる)まぎー」(頭でっかちの人)、「(からじ)ながー」(髪の長い人)のような語をいくらでも作れる。

 ところで、形容詞「ぐまさん」(小さい)の「ぐま」をそのまま名詞の頭に付けると、「ぐま・いゆ」(小魚(こざかな))、「ぐま・ぶい」(小降(こぶ)り)ができる。この場合の「小(こ)」は形容詞「小(ちい)さい」とは直接関係ないことから、両言語の語を作る仕組みの違いがここでも分かる。
 沖縄語では、「ぐゎー」を名詞語尾に付ければ、存在を慈しむ表現「まやー・ぐゎー」、「さき・ぐゎー」、「チルー・ぐゎー」も作れる。それで、形容詞「ぐまさん」から名詞「ぐまー」ができ、それに「ぐゎー」を付けて、小さなものに対しても慈しみを表す「ぐまー・ぐゎー」が出来上がることになる。
 また、場所を表す名詞語尾に「んちゅ」(~に根を張る人)をつければ、「しま・んちゅ」「うちなー・んちゅ」「うみ・んちゅ」も作れる。
 「ゆくし」「たんち」「ゆんたく」から語尾の母音を除いてから、「あー」を付け足せば、少しさげすんだ表現「ゆくさー」(うそつき)、「たんちゃー」(短気者)、「ゆんたかー」(おしゃべり)も作れる。
 さらに、動詞「とぅいん」の語幹に「やー」を付け足せば、「いゆ とぅ・やー」(漁師)が作れる。「うみ あっち・ゃー」にしても同様である。まさに英語の動詞語幹に付くerと同じ作り方である。
(宮良信詳、琉球大学名誉教授(言語学))