コラム「南風」 発表すること挑むこと


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 高校生のころの私は、自分が書いた文章をどこで発表すればいいのか分からなかった。今のようにブログがあるわけでもなく、通っていた高校には文芸部がなく、だからと言って自分で立ち上げるという発想もなかった。

 高校の掲示板の隅に張られた全国の高校生を対象としたエッセイのコンクールのポスターを見て応募したことがある。それが佳作になり、結果が学校に届き、国語の先生に「いつの間に応募したの?」と驚かれた。またそのころは、音楽雑誌の編集者に憧れていたため、音楽系のフリーペーパーを作って仲のいい人たちに配っていた。自分なりに発表の場を模索していた。
 今は沖縄県内に、10代が応募できる賞がたくさんある。詩なら琉球新報社主催の「神のバトン賞」、詩と小説なら浦添市立図書館主催の「YA文芸賞」や、琉球大学附属図書館主催の「びぶりお文学賞」がある。「びぶりお文学賞」は当初、琉大生が対象だったが、昨年から県内の大学、短大、高専、大学院の学生に対象を広げたことが素晴らしい。
 そして、小説、シナリオ・戯曲、随筆、詩、琉歌、短歌、俳句、漫画を子どもから年配の方まで応募できるのは、今年10回目を数える沖縄県文化振興会主催の「おきなわ文学賞」である。
 10年前、「おきなわ文学賞」創設のニュースは東京で社会人1年生だった私の耳にもすぐ届いた。沖縄出身であれば、県外在住でも応募できると知り、意気揚々と応募した。その年は入賞できなかったが、その後3年連続、詩で佳作を頂いた。応募する側だった私が、昨年から審査する側に回っている。詩人でありながら、随筆部門の選考委員をさせていただいている。
 今の10代は恵まれていて本当にうらやましい。チャンスを大事に、どんどんチャレンジしてほしい。
(トーマ・ヒロコ、詩人)