コラム「南風」 少し前から、考えていること


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 旅先で出会った想定外のおもてなしは、お金では買うことができない。初めての海外旅行で夕食の場所を探していると、生中継のサッカーを応援する地元の人でにぎわっている小さな食堂を見つけた。

ケースの中に並ぶお総菜をいちかばちか注文してみる。ハーブを詰めて焼かれたローストチキンのおいしかったこと。思わず翌日も足が向かった。入店したら、すぐに気が付いてくれ、店員も喜んでくれている。赤と白のギンガムチェックのテーブルクロスを少しオーバーなきどった動作で案内された席に特別にかけてくれた。身ぶりで「どうぞ、こちらへ!」映画のワンシーンのようだ。県内入域観光客数が過去最高の658万人に達した。今後も増えていくのだろうか。
 私が勤めていたホテル業界はお客さまに喜んでもらうことが大好きな女性が大勢働いている。残念ながら出産すると多くが辞めてしまう。子育てが一段落しても前職には戻らず、身につけたコミュニケーション能力をかわれコールセンターへ転職するケースは多い。
 長い拘束時間や仕事の内容と賃金が合わないという理由が大きいと私は思う。
 付加価値の高い接客は知識とスキルだけでなく、経験の数が増えることで気のきいた行動が開発される。料飲サービス、宴会業務、コンシェルジュ、マネジメントできる女性管理職など、プロフェッショナルの育成は現在の環境では難しい。
 こんなのはどうだろう、中部に観光業に従事する子育て中の家族専用の街を創り、サービスを充実させる。もっとリアルに別案は、昨年沖縄県では人材育成企業認証制度がスタートした。認証にむけての取り組みで女性のプロフェッショナルが育成され、働きやすい職場の改善も期待できる。ダイナミックな方法で今以上に女性が生かされ、普通に働ける環境を夢見ています。
(田港華子、オフィスDEN代表)