コラム「南風」 一歩の広がり


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 今日から5月。清明祭も終わり、梅雨前の貴重なすがすがしい季節だ。晴れの日は海で泳げる。泳ぐのは得意ではないが好きなのでできるだけ海に行きたい。沖縄の人は近くにあるのに泳ぎに行かないね、とよく本土から来た方に言われるが海に限らず首里城や、やんばるの山々、民謡酒場など、ザ・沖縄という場所に意外と足を運ばず大型スーパーで遊んでいたりする。

 しかし身内に対する気の緩みのようなもので、本当は心からの誇りであり、守るべき宝だと感じている方が多いのではないだろうか。
 近年は主人の写真的好奇心から離島に目を向け始めている。やはり近くにあるのになかなか足を延ばしておらず、知る機会を逃していることが多い。恥ずかしながら宮古島にすら昨年初めて行った。お客さまに宮古島出身の女性がいて幸運なことに彼女が帰省する際、同行し案内していただけることになった。うちの店のメニューに県産山羊肉を使用したハンバーグがある。響きがかわいかったので宮古の言葉を拝借して「ピンザハンバーグ」と名付けた。彼女はそれが一番のお気に入りでフーチバー増量にしてよく召し上がる。
 初の宮古旅は彼女と島に住むお父さまの案内で素晴らしいものとなった。元医師のお父さま。新しく大きくなった宮古病院がご自慢で数回案内してもらう。普通の観光ではなかなか行かないだろう。拝所や史跡にも連れて行っていただいた。人頭税石の話は本島の視点だけではなく多角的に歴史を知る手掛かりとなった。
 そして何と言っても海!どこまでも続く美しい青と魚たちの乱舞は強く目に焼き付いている。無論夜は島酒。みそ仕立てのヤギ汁をすすり、西里のスナックで民謡「なりやまあやぐ」を聴く。最高だった。
 沖縄は広く、奥深い。足元を知り、学び、楽しむことでより愛は深まっていく。
(國吉真寿美、夜カフェ「rat&sheep」経営者)