コラム「南風」 幸せは、そこにある


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 朝起きて、よく見かける光景は鏡の前に座って必死に割り箸をくわえている母。これは何かの儀式とかそういうのではなくて母はほうれい線を消す運動に励んでいるのです(笑)。

 その姿があまりにも滑稽で(別の言い方をすると)チャーミングなので写メを撮って一人でげらげら笑っていると母がこっちを向いて「何笑ってるのよ」となじる。私は母とこんな感じでふざけ合うのが好きです。
 先日私はワンマンライブで「ロンリーイエスタデー」という曲を歌いました。この曲は私が母に対する思いをつづった曲で、サビはこのような歌詞になっています。
 「ずっと言えなかった、愛していると言い続けてくれたあなたの元へ帰って心から伝えたいごめんね、今帰るよ」
 はい、そうなんです。私は道楽娘でした(笑)。学生時代は家に帰らず、ダンスに明け暮れる毎日でしまいには大学受験をやめてダンサーになると家を飛び出したこともあります。反抗期と言ってしまえばそれまでだけど、家に帰って来ても目も合わせない、口も聞かないなんて全くいいことではなかったし、親を泣かせてしまった日にはそれこそ自分自身が傷つきました。でもさ。そんなどうしようもない娘が今は驚くことに社会人やっています。そして沖縄でワンマンライブが実現しました。この曲を歌い終わった後、思わずこの言葉があふれだすのにも無理はありません。
 「っあ~!ママ今まで支え続けてくれてありがとう」。私は年を重ねるたび、注がれてきた愛の重量感みたいなものを感じます。
 広告にこんなのがありました。「うちのお父さんは眠ってばっか。幸せは、そこにある。○○ハウス」。ほっこりする広告ですよね。母の日にはアンチエイジングのグッズをあげよう!。うちのお母さんは箸をくわえてばっか。幸せはそこにある。
(Manami、歌手)