「風が吹いておけ屋がもうかる」とは聞いていたが、「ゴルフが雨にたたられテレビ出演」とは仰天であった。
ゴルフの相手がマスコミ界の有力者。雨がやむまで酒盛りとなった。
酔いに任せて若い頃の少しばかりの運の悪さ(どこかの歌の文句)を面白おかしく話していたら、彼は、いきなり携帯を取り出して、「おもろいオッサンおるでー」と関西弁。その一言でテレビ出演となってしまった。
出演の1カ月前から寝床に筆記用具を備え、収録の予行演習を行った。
相手は、カメラの向こうでビールを飲みながら番組を楽しんでいるサラリーマンと狙いを定める。ワンフレーズで、腹にどんどん収まる名言が必要。同時に村上龍さん、小池栄子さんを研究する。どんな質問をして来るのか。恐ろしいのは小池さんの突拍子もない質問だ。
用意した200以上の言葉メモの内、次の言葉は記憶に残ったようだ。
『100見は一触にしかず』。私たちのシャツは、100回見るよりは、一度触ってほしい。
『5千円であなたの人生が変わります』。値段の3倍もバリューある商品なので、今まで経験したことのない満足を得るでしょう。
業界は価格音痴ですね。値下げ、バーゲン、社員特別割引。お客さまが体験する値段のつらさが分からない。商売の正否は値決めによる。
小池さんが、「あなたは誰のために、何のために仕事をしていますか?」
「日本と日本人のためです」。その時、小池さんの目に涙。この人も生粋の日本人…。
何とか番組収録は終了した。スタジオに来ていた縫製工場や社員の皆さんは、私より疲れた様子であった。
(貞末良雄、メーカーズシャツ鎌倉会長)