コラム「南風」 沖縄は地元の自然知ろう


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 年に1度、石垣島や西表島でアサヒナキマダラセセリ(アサヒナ)が飛び回るシーズンになりました。県の天然記念物である「アサヒナ」を知っている人はどのくらいいるのでしょうか。

私の行うイベントで、「沖縄の天然記念物のチョウ3種は?」と質問すると、たいていオオゴマダラと返事が返ってきます。続いてコノハチョウ(コノハ)。正解は「アサヒナ」、「コノハ」、フタオチョウ(フタオ)ですが、「アサヒナ」、「フタオ」と答えられる人はほとんどいません。目につきにくいチョウではありますが、この知名度の低さには驚きます。
 沖縄県は自然の豊かさを観光の目玉にしているはずなのに、地元の人が沖縄の自然を知らないことは問題です。学校の教科書には載っていないのでしょうか。石垣島の市蝶が「アサヒナ」でなく県内に広く分布するオオゴマダラであることも個人的にはもったいないと思っています(ただしオオゴマダラは沖縄島と八重山では亜種が違います)。
 3種とも天然記念物に指定されたのに、公的な調査は十分でなく、保護の仕方にも問題を感じています。私は個人で「アサヒナ」と「フタオ」の生態に関するリポートを発表し、現在「フタオ」の第2報を書いているところですが、それは今まで調査されていなかったということでもあります。
 天然記念物に指定し採集禁止にした以上、それらのチョウを調査するシステムも同時に作らなければなりません。それは保護と教育につながります。チョウを例に出しましたが、沖縄の自然全般に言えることです。沖縄はもっと地元の自然を知ろうとするべきです。
 来月は私がもっとも好きなチョウである「フタオ」がピークを迎えます。こんなにかっこいいチョウが地元にいるのに知らないなんてもったいない! これはチョウに恋する私のひいき目ではありませんよ。
(宮城秋乃、日本鱗翅学会自然保護委員)