コラム「南風」 海外でボランティアをしたい君たちへ


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 国際協力について講演しているためか、例年、この時期になると夏休みに向けた途上国ボランティアの問い合わせを大学生から受けています。「タイに行きたいのですが、エイズの支援活動にはどうやったら参加できますか?」とか。

 いつも私の回答は同じです。「まずは楽しく旅行したらどうですか? 悲しい部分を先に見ようとするのではなく、すてきなところを発見してみてください」
 ボランティアをしたいという気持ちは立派なのですが、ある国をよく知りもせずに、いきなり援助したいというのは、その国に対して失礼だということに気が付いてほしいのです。行ったことすらない国の貧困や無知を勝手に想定し、それを支援したいという人には、その人の発想の貧困と無知が見え隠れしています。
 国際協力に憧れがあるにしても、まず、アジアを、世界をよく知ることが先だと私は思うのです。
 ホームレス、飢えた子どもたち、貧困から立ち上れない人々、世界にはそんな人たちがたくさんいます。しかし、学生時代から、世界のそんな悲しい側面をクローズアップし過ぎてはなりません。
 よく「アジアの隣人」という言い方がされますが、本当の意味でアジアの人たちを「隣人」と私たちが感じていくためには、こうした偏見というか、部分的な見方というのを乗り越えていく必要があるのではないでしょうか?
 この夏、途上国でボランティア活動をしたいと思っている学生さん。あなたは、その国が好きですか? 好きと言えるだけ、その国を知っていますか? もし、口よどむことがあるのなら、ちょっと旅の計画を練り直してはどうでしょう。ボランティアとなる前に、あなた自身を見つめ直すような、そんな上手な旅人になってほしいと私は思うのです。
(高山義浩、前県立中部病院感染症内科地域ケア科医師)