コラム「南風」 正しい情報の見きわめ


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 現代は情報社会と呼ばれ、総務省によれば6歳以上のインターネットの普及率は約80%と報告されています。しかしながら、インターネット上の情報は、誰もが何のチェックもなく発信できることから、必ずしも正しいものでない可能性があります。比較的正しい情報と思われる「アンケート調査」の結果でも、時には信ぴょう性に欠けるものが少なくありません。

 例えば、テレビ番組で「あなたは今度の選挙で比例代表はどの党に投票しますか?」とアンケート調査を行い、視聴者の電話回答で、結果をグラフ化するものをよく見かけます。結果から、今度の選挙は与野党逆転するかもしれないと予測したが、ふたを開けてみると結局与党が圧勝に終わるということがあります。
 これは「選択バイアス(偏り)」といわれる現象で、テレビ番組のアンケートの回答者と、実際の選挙の投票者の特徴が大きく異なっていたことが考えられます。テレビの回答者は、政治に強い興味があり、アンケートに参加するなど積極的で変革を求めていた人を多く含んでいた可能性があります。一方、投票者は、例えば友人に頼まれたからなどという人もいて、必ずしも前者のようではありません。従って、投票結果を予測したいのなら、番組側が投票権のある人に無作為に電話をかけて、その回答を調べる方が真実に近づくのです。
 また、医学生の教え子が「1970年代のカラーテレビの普及は結核死亡を減少させた」と大真面目にレポートを書いてきましたが、これは「交絡」と言われる現象で、見せかけ上グラフを作るとそのように解釈できますが、結核死亡を減少させた本当の原因は高度成長による収入増加に伴う栄養改善と医療の発達なのです。
 正しい情報を見きわめることは容易でなく「技術」を伴います。
(笹澤吉明、琉球大学教育学部准教授)