コラム「南風」 今後の日本の物づくり


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 体をやさしく包みこんでくれる良い服は、人の心を豊かにしてくれる。人は良い物に触れなければ、触発されることはない。

 良い物造りのお手本であった欧米諸国も、利益第一主義の風潮で伝統の技術を捨て去ることになった。
 日本では、戦後、安かろう悪かろうの1ドルブラウスに代表される製品は蔑視の的でもあった。汚名挽回の努力は、やがて日本製品の評価を高めていった。欧米で忘れられた技術を日本特有の繊細な心づかいで進化させている。
 しかし、手間暇かける作業は高価にならざるを得ない。安く作って高く売る、残ればセールで処分する慣行は、やがて日本の物造りを根底から覆してしまった。基幹産業として、繊維立国してきた日本であるが、今や風前のともしびである。
 マーケットはグローバル化している。洋服の先進国から進出してくる巨大企業に立ち向かうには、メード・イン・ジャパンを盾に闘うしか活路はない。
 今の日本は、海外勢に対抗する力もなく日本を脱出。中国マーケットに逃げ込んでいる。だが、ここには既に、世界の強豪が待ち構えている。中国製品で中国で戦う。果たして勝算があるのだろうか?
 日本の物造りは、生き残りをかけて世界No1を目指さなければならない。積極的な改革、研さんは当然であり、マーケットニーズをくみ取り、欧米を納得させる感性も要求されている。
 日本の物造りの現場に、洋服に対する感性を要求するのは難しいでは済まされない。克服する課題と認識することが重要だ。
 感性は上質な生活環境から生まれる。すなわち、成熟した文化から醸し出されるのだ。
 日本で作るからメード・イン・ジャパンではない。ブランドに恥じない、世界の一流が要求されているのである。
(貞末良雄、メーカーズシャツ鎌倉会長)