コラム「南風」 「侵略者」は「地球人」


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 南風担当者との会話で、たまには政治や行政とは無関係の話を書いてみようということになり、掲載2日前に原稿を書き直しています。しかし私の日々の目的が沖縄の昆虫を守ることなので、結局は自然保護活動となり、私の生活からそうでない部分を探すと好きな特撮ヒーローの追っかけぐらいしか浮かびません。なので特撮の話でも書いてみましょう。

 金城哲夫脚本の「ノンマルトの使者」は、地球原人ノンマルトが現在の地球人に侵略され海底にひっそりと住むようになったが、地球人がその海底をも開発しにきたため、ノンマルトと、地球人に味方するウルトラセブンが戦うという作品です。
 金城が作中に忍ばせた思いを知ることはできませんが、私の中ではノンマルトが野生生物、地球人が私たちです。地球人は生物学的に種が違うわけでもないのに自分たちで決めた人種で人類を区別し、領土を手に入れるため争っています。そもそも地球の陸も海も人類のものではありません。人類のものと考えるから争いが起きるのです。
 自然の残っている陸や海があるのならこれ以上範囲を広げて資源を奪ったり埋め立てたりすることなく野生生物のために残してあげたらよいと思うのですが、欲の深い人類にとってこれが難しいようです。人類は現在の生息地ですら自ら農薬や放射能で汚していきます。これ以上、地球の野生生物たちの生息地を「侵略」するべきではありません。
 ウルトラ警備隊のアンヌ隊員は作品の前半で「私は人間だから人間の味方よ」と言いました。しかしノンマルトを倒した後には心晴れないアンヌ隊員の姿。作品をご覧になった方は解釈は違っても何らかのメッセージを受け取ったでしょう。私は微力だけど沖縄の野生生物の味方でいたい。守りたい。何から? 私たち地球人の手からです。
(宮城秋乃、日本鱗翅学会自然保護委員)