コラム「南風」 大人のキレイ通勤服


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 昨年の9月に東京に行った時に、電車内で見たデパートの広告が印象的だった。「大人のキレイは、ラクチンがいいのだ」というコピーと、ぺたんこ靴を履いた松雪泰子。
 この春放送された、知花くららが出演したユニクロのスマートスタイルパンツのテレビCM。「きちんと見えて動きやすい」というコピーにとても共感した。

 ここ何年も、制服がなくて、外回りの営業ほどではないけれど、それなりに人と会う仕事をしているので、(1)きちんと見えて(2)程よく華やかで(3)それでいて身体に負担のない服を着たい、といつも考えている。この三拍子をバランスよく兼ね備えるのが結構大変で、油断するとどこかに偏ってしまう。
 例えばこの冬を振り返ってみると、「きちんと」ばかりに偏っていて、華やかさが欠けていた。いつ営業の代わりにお客さまのところへ行くかわからないというポジションであるため、日々、パンツスーツのような格好をしていたのだ。仕事は忙しいし服は黒いし気がめいる。黒い服を着ていると誰かに「もっと明るい色の服を着なさい」と注意される。これまでに何度注意されたか分からない。同じ人に何度も注意されるのではなく、違う人に1回ずつ注意されるのだ。
 TPOではなくTPPOという考え方に共感する。時、場所、場合に「誰と」を加え、誰と会うのか、その人にどういう印象を持たれたいのか、という視点を持つ考え方である。ファッション誌で出合った「人目を気にするのではなく、人目を大事にする」という言葉は名言だと思う。通勤服は自分の個性を主張するためのおしゃれではなく、その日に会う人や、一緒に働く人のための気遣いのある服装だと考える。真面目に働くことはもちろん、気遣いのある信頼される服装を心掛けたいものである。
(トーマ・ヒロコ、詩人)