コラム「南風」 バッシング歓迎


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 私は最近悩んでいることがあります。
 それは芸術を「評価する」ことについてです。
 私は自分の曲に関して、いろんな方に意見を求めますが、逆にそれを求められる時、例えばアーティストのお友達に「自分のパフォーマンスどうだった?」とか、「曲どうですか?」みたいなことをよく聞かれます。

 自分が評価されるのはまだしも、評価すること、コレは私の一番苦手なことなんです。(笑)
 実際、音楽を聞いていて、わたし的にピンとこないなぁというものがものすごく売れたり、同様に映画も賞を総なめにしていたり、自分の評価に自信をなくすことってありません?
 私が特にそれを実感したのは美術史を勉強していた大学時代でした。
 マネという芸術家は代表作「草上の昼食」や「オランピア」で、その当時はスキャンダラスな裸の女性を描いて、大バッシングを受けますが、後の芸術家たちから高い評価を受け、印象派の先駆者と言われるようになります。
 またマルセル・デュシャンはただのトイレの便器にサインしただけの作品「泉」を出品し、その斬新さが物議を醸し20世紀の美術に大きな影響を及ぼしました。
 もはや、なんでもいいんかい!と思わずつっこみたくなりますが、お二人とも新しい時代を築く革命児だったのです。だから、誰かに評価を求められた時、わたし的によくないと感じた時ほどもしかしたらこの人は今日のマネ、またはデュシャンなのかもしれないとか、余計なことを考えるんですよ。
 芸術ってなにが起こるかわからないから。
 そうだ! 私の新しいアルバムのジャケットはトイレの便器にManamiのサインでどうですか?
 ぜひバッシングしてください。
(Manami、歌手)