コラム「南風」 沖縄語の敬語


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 沖縄語の敬語表現を簡単にまとめ、日本語との違いを明らかにする。
 丁寧表現には、次のように動詞「辞(や)み(たん)」(辞めた)、「や(たん)」(だった)に丁寧要素「やび/いび」が続く。

 (1)仕事辞(しくちや)み・やび・た・ん。
  (仕事を辞めました)
 (2)先生(しんしー)や・いび・た・ん。
  (先生でした)
「でした」は、「でありました」の短縮だとすると、沖縄語の「やび/いび」には「ます/まし」が対応する。
 沖縄語の尊敬表現では、以下のように、動詞「やみ」に尊敬要素「みそー/みしぇー」が後接するのを基本とする。
 (3)やみ・みそー・り。
  (おやめになってください)
 (4)先生(しんしー)や・みしぇー・ん。
  (先生でいらっしゃる)
 一方、日本語では「お…になる」に動詞「やめ」をはめ込んで、「おやめになる」にするか、尊敬動詞の「いらっしゃる」とかで表す。
 さらに、沖縄語の敬語表現では、(5)のように尊敬動詞「めんそーちゃん」単独で表すか、(6)のように尊敬動詞「うさが(いん)」と尊敬要素「みそー」と連結したり、(7)のように謙譲動詞「うんぬき(ーん)」と丁寧要素「やび」と連結したりする。
 (5)うんじょー何処(まー)から
  めんそー・ちゃ・が?
  (いらっしゃいましたか)
 (6)くりん うさが・みそー・り。
  (お召し上がりください)
 (7)御(ぐ)挨拶(えーさち)うんぬき・やび・い・ん。
  (申し上げます)
 さらに敬意を強めると、(5)、(6)の動詞形は「めんしぇーびたが」、「うさがみしぇーびり」になる。そこでは「めんそー」/みそー」と続く「やび」との融合が起こっている。
(宮良信詳、琉球大学名誉教授(言語学))