コラム「南風」 縁結びの百足さま


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 夏本番が近づきムシムシしてくると思いだす悪夢がある。会社の寮に住んでいたとき、洗濯ハンガーを取り込んだ際、床にパサッと何かが落ちた。見ると節足動物の後ろ姿が家具の隙間にうねうねと早い動きで入ていった。「なんだろう」絵を書いて職場の人に見せたらムカデじゃないかと言うので探したのだがいない。ほっておいたら危機は2日後にやってきた。

 真夜中、激痛で飛び起きた。左足の中指の付け根を鋭利な物でグーイグイと挟んでくる。真っ暗な中ぶんぶん腕をまわし電灯のひもをつかみ電気をつける。またパサッという音。あのやつに違いない。
 パニック状態で言葉がうまく話せないなか、近所に住んでいた相棒に電話をかけたら車で来られるかというのでこの状態で運転? まぁできなくもないけれど、まず、やってみますということでゆっくり運転で無事に到着。既に冷静さを取り戻し、到着していた救急車で搬送された。左足ははれ上がり痛みも強くなってきた。病院は熱中症の人たちでいっぱい。痛いと声に出さないと耐えられない、体は、くの字。様子を見かねた医師に「あのムカデさんなんとかしてあげて」と言われた後から病院での記憶がない。
 少し遅れて出勤したら他部署の人まで救急車で運ばれたことをご存じ。どうやら子供が熱発し救急を利用していた社員が、救急の扉が開いたと思ったら、ストレッチャーに体育座りの私が運ばれてきたということだ。こうゆう情報共有はホントに早い。寝ずの出勤お互い仕事の虫だなぁ。
 また咬(か)まれたら大変だと虫のいい話をしてその日から相棒の家にお邪魔虫することに決めて、せっせと自分の荷物を少しづつ運び、全て運び終わるころ、8センチ程のたっぷりした胴体のあのやつが姿を見せたが、ペタンコになってもう動かなかった。
(田港華子、オフィスDEN代表)