コラム「南風」 多様性の強み


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 琉球大学サッカー部には2年に1人くらい初心者の学生が入部します。同じ九州大学サッカー2部リーグや上の1部リーグには、サッカー推薦で100人を超えるサッカー部も多くあります。琉球大学サッカー部にはサッカー推薦枠は一つもなく、サッカーが好きな学生が1学年5、6人入部するだけで、際立った実績を持たない学生がほとんどです。

そんな中、この6年間2部リーグに残留し、時には優勝争いや1部入れ替え戦に進んだことを誇りに思っていますが、初心者でも入部できるからこその強みがあると考えています。
 「多様性」という言葉をよく耳にします。例えば「生物多様性」であり、地球上には多様な生物が存在し、それぞれが関わりを持ってバランスを保って存在しています。温暖化などの環境破壊で多様性が損なわれると、食物連鎖が乱れて人間にも大きなダメージが与えられます。また、「人間多様性」とは、社会において多様な性質を持った人々が、さまざまな意見を持って最適に配置されている状態のことです。単一性の組織は、意見の統一は容易で規律のある強い組織を形成できますが、一度崩れると脆(もろ)い組織に陥ってしまいます。
 途上国の畑作は、同じ畑に多種多様の作物を栽培し、天災や病気などの被害を受けても、これが駄目でもあれは豊作といった、リスクの分散を図る工夫がなされています。
 琉球大学サッカー部の初心者が果たす役割は、まずサッカーは面白く魅力的なスポーツであることを再確認させてくれること、さらにどんどんうまくなるので他の選手に多大な刺激を与えることなどです。
 私は、ある甲子園優勝校のように日替わりでヒーローが代わるような多様性ある集団を育てていきたいと考えております。強さと優しさを兼ね備えた集団となるために。
(笹澤吉明、琉球大学教育学部准教授)