コラム「南風」 世界一


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 第16回世界空手道選手権大会、決勝戦。日本対フランス。判定の時、会場は静まりかえり、主審の笛の合図で審判員の旗が一斉に揚がった。次の瞬間、場内にはフランスチームの歓喜の声が響き渡った。「負けた…」

 私は、結果を受け止められないまま表彰台へ。唇を一文字に結んだ私を見てプレゼンターが「スマーイル」と声をかけてくれた。これまで我慢していた涙がこぼれ落ちそうになったが、表彰台の上で悔し涙は流したくない、ここで歓喜の涙を流したいのだと唇を結び、涙をぐっと堪えた。
 目標金メダル、打倒フランス、2年後のメキシコ大会に向け再始動した。
 東アジアオリンピック、アジア大会など国内外の大会で経験を積み、04年11月再び世界大会の場に戻ってきた。初戦地元メキシコ。2回戦バミューダ。準決勝ブラジルを下し決勝進出。対戦国は前大会、決勝戦で敗れた宿敵フランス。2年前と同様の対戦になったのである。
 前回の雪辱を果たすべく、心は獅子のごとく闘志を燃やし、頭は冷静沈着に持てる力を出し切り試合に挑んだ。
 全てを出し切り判定の時、主審の笛の合図で旗が揚がる。赤日本、青フランス。主審の笛が響き渡る。「ピーー」。赤3本、青2本、日本優勝。ついに「世界一」。そして、表彰台の一番高い場所で歓喜の涙を流すことができた。
 世界への挑戦は、勝敗だけでなく、人生において財産となる人との出会い、目標に向かう過程、貴重なことを学ばせていただきました。これまで時間を惜しまず指導していただいた師匠、常に支えてくれた家族、共に戦った仲間、そして周囲の方々の応援。一人では成し得る事ができなかった「夢への挑戦」です。
 読んでいただいた皆さま、携わっていただいた皆さまに心から「感謝」申し上げます。
(豊見城あずさ、劉衛流あずさ龍鳳館館主)