コラム「南風」 沖縄語とは?(まとめ)


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 沖縄語(うちなーぐち)は沖縄本島と周辺離島で千年以上にわたって受け継がれてきた個別の言語だということを以下にまとめる。

 本土方言であれば、江戸語か上方語のいずれかとの連続性がみられ、奈良・平安時代から続いている5、7音を基調とする和歌などの文芸との関わりを持ち、古い日本語との間で親子という縦の近縁関係が認められる。一方、沖縄語の場合には、言語年代学によると、基本的には千年以上も前の日本語としかつながらない。この千年以上もの空白により連続性は断たれ、縦の近縁関係はもはや成立しない。それに代わって、奈良朝上古語以前を基軸として並列という横の近縁関係が成立する。つまり、沖縄語と日本語は姉妹語の関係にあり、日本語の方言なんかではない。
 実際に沖縄語を動かしている語や文をつくる仕組みを取り出してみれば、日本語との基本的な違いはいくらでも挙げられる。沖縄語の連続子音の種類や、子音と母音の組み合わせにしても3割ほどは日本語にはない。
 基礎的な生活語彙(ごい)の概念的な違いもすでに見た。“人を表す”語を作るのに、名詞や形容詞の末尾母音を伸ばしたり、名詞の末尾母音を「あー」で差し替えたり、「んちゅ」を付加したり、動詞語幹に「やー」を付与したりする沖縄語独自の方法も紹介した。
 文中における名詞句の構造標示を担う助詞の配置にも、日本語とは基本的な違いがあった。また、日本語の動詞形「取った」とは違い、沖縄語の「取(とぅ)たん」では過去時制の「た」に続いて法要素「ん」が要請され、それが他の法要素とも入れ替わってさまざまな疑問や強調の構文ができる。さらに、「取(とぅ)いたん」のように目撃情報も盛り込めるし、敬語表現の基本的な違いも見た。
 よって、沖縄語は日本語とはまったく別の言語である。
(宮良信詳、琉球大学名誉教授(言語学))