コラム「南風」 少年時代、思い出して


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 リュウキュウアブラゼミが鳴き始めました。今大人のみなさんは、子どもの頃にセミ捕りをされた方が多いかと思います。私も毎日、虫捕り網を持って近所を駆け回っていました。

 沖縄は今でも、家の外に出ればすぐに虫を捕れる場所があります。しかし日本の各地には、子どもだけでは虫捕りに行けないような都会に住んでいる方々がたくさんいます。そういう場所に住んでいる子どもたちはいったいどうしているんだろう、親が休みの日に連れていってくれるのを待つしかないのかな、と、東京の都会に行くたびに思います。子どもたちだけで日常的に虫捕りに行ける環境は、今となっては当たり前のことではないのです。それなのにどうして沖縄は、そんな貴重な財産を手放そうとするのでしょうか。私は年配の昆虫の先輩たちから、「昔は良かったよ、今の何倍も虫がいた」という話をよく聞きます。だったら私や今の子どもたちにその頃の自然を残していてほしかった…。
 子どもは自然があれば十分楽しいんです。虫を捕って、木に登って、川でずぶぬれて、たまには虫に刺されたり、転んでケガをしたりして。虫のハンティングも、網に入った虫を取りだすことも、虫をカゴに入れることも、小さいうちは難しいけれど、兄姉や年上のお友達に手伝ってもらって、そのうち一人でできるようになります。虫を奪いあってけんかするのも人生経験だ!
 大人のみなさん、今のあなたの行動は誰のためのものですか。子どものため?自分のため? 日本の偉い人のため? 大人の都合で、子どもたちから自然を奪ってはいけません。
 子どもたちに虫捕りできる環境を残すために、まず大人のみなさんが虫捕り網を持っていた頃の気持ちを思い出してほしいのです。そろそろ梅雨明け。さぁ、夏がやってきますよ!
(宮城秋乃、日本鱗翅学会自然保護委員)