コラム「南風」 人事を尽くす


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 新聞は記者が大変な思いをして書いているから床に置いてはいけないよと、父に言われていた。それから約30年後父は自社が新聞社に買収され、辞めることになる。同時期に母がALS(筋委縮性側索硬化症)を患い在宅で胃ろうやたん吸引が必要な24時間見守り介護の療養生活が始まった。

父は「辞めることになって介護に専念できるし良かったよ」と言っていた。私は開業まもないホテルで忙しく過ごしていた。
 沖縄の20年後、人口は増えるが、生産人口は減少、高齢者の割合が増える。高齢者1人を支える生産人口は2人強。家族に介護が必要な人が増え職場の拘束時間の当たり前基準が変わる。これまでの慣習を改善し、付加価値の高い仕事が求められる。「本日○○は介護のため早退しましたので、私△△が変わって対応します」。情報共有の環境が整った職場は迅速な対応で企業信頼度が向上する。
 話は戻るが、プライベートが前述の最中、私に人事異動の話があり、(もう、これ以上私は頑張れない)と急に込み上げてきて翌日から会社に行けなかった。退職することに決めた。その時上司に言われた言葉は私のモチベーションのお守りのように効いている。
 月1回の遠距離介護で羽田―那覇の交通費捻出に自分の時間を優先できる仕事を探し始める。世の中はIT革命でパソコン講師の求人が増えていた。賃金も高額でこれからは沖縄でもパソコン講師だと、関心を持っていたら偶然にも沖縄県もIT産業で働く人材育成を始めるタイミングで講師養成講座に奇跡的に参加が決まり、恩師に出会う。それ以来、関わる方から応援いただき仕事を続けている。半年間も読者には私の徒然(つれづれ)を読んでいただいた。母は長生きしたかっただろう。父が最近元気になりうれしい。全ての出来事に心から感謝し前に進む。
(田港華子、オフィスDEN代表)