コラム「南風」 白南風の吹く海へ


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 最後の原稿である。連載中の上半期を振り返ると、不妊治療からの卵管造影検査、腹腔(ふくこう)鏡手術後、待望の自然妊娠。しかし心拍停止という残念な結果を迎え、心身ともに健康とは言いがたい状態であった。

 「子どもは忘れ物を取りに行っただけ」という言葉に救われた。家族と周囲の支えを感じ、今までの生き方を深く考え直す機会をいただいたように思う。
 沖縄は全国一の出生率を誇り、比較的子育てしやすい環境にあると言われる。しかしそれ故に子どもがいない女性に対する風当たりは強い。受けていた不妊治療外来の待合室はいつも同年代と見られる女性がずらりと並び、予約を取っていても平均1時間は待たされた。ここにも悩める女性たちはやはりたくさんいるのである。
 私自身散々迷ってやっと受診したが、同じく迷っている方には早めの受診をおすすめしたい。まず自分の身体の状態を知ることが重要であり、料金的なことも相談しながら無理なく進めることができる。病院は人の勧めで決めたが、そこまで待たされることなく受診できる所もあるだろう。
 今回のことがあって自然から学ぼう、という気持ちが強くなった。台風の空を見上げるとまた空に青い色が広がるとは思いがたい。しかし潮は満ち引き、景色は劇的に流れていく。そして日常も心も変化してしまうものである。当たり前のことなど何もない。全ての巡り合わせは奇跡的であり、自分のやり方で受け入れていくしかない。
 「白南風(しらはえ)」は梅雨明けに吹く6月末の風の名だ。また風向きが変わる。私に吹いた暖かな風はたくさんの出会いをもたらし、学びの場をくれた。毎回楽しく書かせていただいた上、連載がきっかけとなり30年ぶりの友達にも再会できた。さて。白南風を感じたら、ゆっくり海で泳ごうか。
(國吉真寿美、夜カフェ「rat&sheep」経営者)