コラム「南風」 サッカーW杯の反省


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 サッカーW杯の日本代表は、グループリーグ1分2敗で予選落ちし、決勝トーナメントに進めませんでした。残念ですがこの結果を真摯(しんし)に受け止め反省し、次のW杯に向けて取り組んでゆく必要があります。

 私は日本サッカー協会の講習会等で、日本が目指すサッカーを聞いてきました。日本人の長所である持久力や瞬発力を生かした組織的なサッカー、ポゼッションとも言われるパスサッカーの完成度を高めるのが方向性のようです。
 そこで、ある有名な指導者は言いました。究極の目標はゴールキーパーと2対1や3対1の数的優位をつくるほどの崩しができれば得点力の問題が解決できると。凄(すご)い考え方ですが、あの世界の兵(つわもの)どもを相手にそれが可能かと疑問を感じました。
 選手選考も技術のある中盤の選手を全国から集め、俊足の子はフォワード、長身の子はセンターバックにして、パス回しを重視したチームづくりの考えも述べていました。
 このような育成で、メキシコ五輪で活躍した釜本邦茂さんのような、世界的ストライカーが育つのか?と質問しましたが、そのような選手は育てることはできず、自然と出てくるものだと回答されました。
 強豪国には、アルゼンチンのメッシ選手のように優れたストライカーが存在します。他国の選手を見ると、サッカー以外でも優れたアスリートになれそうな雰囲気がありますが、日本の選手はそう見えません。
 日本の少年はサッカーを「習ってる」と言います。本来は「遊ぶ」ものではありませんか。日本の教育界全てに該当するかもしれませんが、ある一定水準の万能型を金太郎あめのように作ることに終始していないかと感じます。前回多様性の強みについて触れましたが、個性のある選手の育成にチャレンジすることが今後の鍵となるでしょう。
(笹澤吉明、琉球大学教育学部准教授)