北朝鮮、より強圧的に 日米韓協力、抑止の要


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 米シンクタンク戦略国際問題研究所のビクター・チャ上級副所長(同研究所提供・共同)

 朝鮮半島全域が戦場と化した朝鮮戦争の休戦協定締結から27日で70年。米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)のビクター・チャ上級副所長は、核・ミサイル戦力に自信を深める北朝鮮が今後、より強圧的になるとの見方を示した。抑止の要は日米韓協力だとし、日韓の関係改善が進む中で一層の連携拡大に期待した。(ワシントン共同)

 ―休戦から70年だ。

 「ロシアがウクライナに侵攻し、中国は南シナ海や東シナ海で海洋進出を強めている。世界の安全保障環境は不安定だ。朝鮮戦争を経て生まれた米韓同盟は朝鮮半島だけでなく台湾海峡、さらにはインド太平洋地域の安保にも目を向けるグローバルな同盟に発展した」

 ―北朝鮮は12日に新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星18」の発射実験をした。

 「今まで以上に危険になっている。軍事力に自信を深めるほど、より強圧的になるだろう。自国の安全の保証を求め、核保有国として認められたいほか、貿易解禁のため制裁解除を望んでいる」

 ―非核化は可能か。

 「金正恩朝鮮労働党総書記の下では実現しないと思う。だが諦めるべきでない。今は誤算による衝突や、北朝鮮が核分裂性物質を生産して他国に売るリスクを減らす方法を見つけなければならない。核・ミサイル開発の資金となる暗号資産(仮想通貨)を北朝鮮がサイバー攻撃で窃取していることへの対策も必要だ」

 ―米国の課題は。

 「北朝鮮への締め付けを強める上で、拒否権を持つ中ロの反対で機能していない国連安全保障理事会とは別の場を見つけることだ。先進7カ国(G7)や、北大西洋条約機構(NATO)に日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドの4カ国を加えた『NATOプラスAP4』の枠組みは代替になる。人権問題にも、もっと取り組むべきだ。北朝鮮は人権侵害の指摘を本当に嫌がっており、アキレス腱だ」

 ―日米韓の役割は。

 「非常に重要だ。日韓関係が劇的に改善している現状を利用しながら情報共有からミサイル防衛、サイバーセキュリティーに至るまで、できる限り3カ国の連携を進めてほしい。台湾統一を狙う中国への抑止力になるし、ロシアににらみを利かせることもできる」

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 2004~07年、米国家安全保障会議(NSC)で朝鮮半島を担当。22年6月現職。国防長官の諮問機関、国防政策審議会のメンバーも務める。