有料

「成り済まし借金」に注意 SNS偽広告で若者誘導


「成り済まし借金」に注意 SNS偽広告で若者誘導
この記事を書いた人 Avatar photo 共同通信

 「アンケートに答えるだけでお金がもらえる」といった偽の広告を交流サイト(SNS)で見た若者が消費者金融に誘導され、指示に従ううちに「成り済まし借金」の被害に遭うケースが相次いでいる。多くのフォロワーを持つインフルエンサーの影響力を利用したもので、警察が立件したケースも。専門家は「スマホネーティブ世代へのリテラシー教育が必要」と警鐘を鳴らす。

 「自分がフォローするインフルエンサーの投稿は信じやすいのだろう。うまい話には乗らないようにしてほしい」。京都府警の捜査幹部は話す。

 府警と岐阜県警の合同捜査本部は10月、不正アクセス禁止法違反と窃盗の疑いで福岡市の無職男(22)を逮捕。男は実在するポイントサイトの担当者を装い、14万人以上のフォロワーがいるインフルエンサーの女性モデルに報酬を約束、広告投稿を依頼したとされる。

 実は広告は虚偽で、それを見て連絡してきた群馬県の20代女性を消費者金融のサイトに誘導し、指定したIDなどで登録するよう指示。5月、借り入れに必要なパスワードを女性に送らせた上で成り済まし、無断で現金20万円を引き出した疑いが持たれている。

 府警は各地で同様の被害を把握しており、男が何者かと共謀したとみている。国民生活センターにも5月と9月、九州地方に住む20代男女から相談が寄せられた。

 インフルエンサーに報酬を支払って広告投稿を頼む企業は少なくない。テレビCMなどより対象を絞りやすく、投稿内容に親しみを感じる若者に関心を持ってもらいやすいからだ。

 ただインフルエンサー自身が広告の真偽を見極めるのは限界がある。偽の広告を流したと指摘され謝罪に追い込まれたインフルエンサーもいた。

 大手消費者金融各社は申し込み段階で注意喚起の画面を出すなど対策を急ぐ。ある社の担当者は「SNSが舞台なので誰もが被害に遭う可能性がある。業界全体で情報交換し周知に努めたい」。

 サイバーセキュリティーに詳しい立命館大情報理工学部の上原哲太郎教授は、スマートフォンの普及率が上がれば上がるほど被害は増えると予想。18歳から利用できる消費者金融もあるため、高校を卒業したばかりの若者へのリテラシー教育が急務と指摘する。

 その上で「他人からIDなどが指定された時点でおかしいと気付かなければならない」と強調。一つ一つの入力がどういう意味を持つのか考える必要があると訴えた。


<用語>インフルエンサー 交流サイト(SNS)で大きな影響力を持つ人。タレントやモデル、スポーツ選手に限らず、多くのフォロワー(読者)を持つ一般人も含む。若い世代を中心とした消費者に対する発信力を期待し、企業が商品やサービスの広告宣伝活動を有償で依頼することが増えている。

(共同通信)